是枝裕和とジュリエット・ビノシュの出会いから生まれた映画『真実』

7月 15, 2020

是枝裕和とジュリエット・ビノシュの出会いから生まれた映画『真実』

 

今回は、是枝裕和監督が手がけた映画『真実』についてご紹介させていただきます!

 

ジュリエット・ビノシュ、カトリーヌ・ドヌーヴ、イーサン・ホークらが出演したことでも大きな話題となった是枝裕和監督の映画『真実』

前作『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭・パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、初めて手がけた国際共同製作の長編映画です。

 

全編フランスで撮影を行い、国際的に活躍するスター俳優が出演することになった映画『真実』は、是枝裕和監督にとってこれまで以上に大きな挑戦だったことは間違いないと思います。

そして……その映画制作のスタートは、是枝裕和監督とフランスを代表する女優ジュリエット・ビノシュの出会いから生まれました。

というわけで、そのあたりのことにも触れつつ、ご紹介していきます!

 

是枝裕和とジュリエット・ビノシュの出会いから生まれた映画『真実』

作品内容を紹介する前に、まずは簡単に是枝裕和監督と主演女優ふたり(カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ)のプロフィールを見ていきたいと思います。

 

是枝裕和 監督

是枝裕和監督

是枝裕和(これえだ・ひろかず)監督は、1962年6月6日生まれ、東京都出身の映画監督・テレビディレクター。

早稲田大学を卒業後、「テレビマンユニオン」に参加し、主にドキュメンタリー番組の演出に携わる。

1995年、『幻の光』で映画監督デビュー。

2004年に公開された映画『誰も知らない』は、第57回カンヌ国際映画祭・男優賞(柳楽優弥)を受賞(日本人初、史上最年少での受賞!)

その後の作品も国際的に高く評価され、2013年公開の映画『そして父になる』は、第66回カンヌ国際映画祭・審査員賞を受賞

2018年に公開された映画『万引き家族』では、第71回カンヌ国際映画祭・パルムドールを受賞しました。

 

そんな是枝裕和監督の、パルムドール受賞後第一作となるのが、今回ご紹介する映画『真実』です。

物語の舞台は、フランス・パリ。

そして、出演しているのは、フランスを代表する大女優ふたり……

そうです!

ついに是枝裕和監督が、名実ともに世界的な巨匠映画監督の仲間入りを果たした記念碑的な作品なのです。

 

カトリーヌ・ドヌーヴ

カトリーヌ・ドヌーヴ

カトリーヌ・ドヌーヴは、1943年10月22日生まれ、フランス・パリ出身。

映画ファンなら誰もがその名を知っている、フランスを代表する大女優です。

本名のカトリーヌ・ドルレアックとして10代で映画デビュー。その後、カトリーヌ・ドヌーヴに改名して活動を続ける。

1964年製作のミュージカル映画『シェルブールの雨傘』でブレイクすると、これまでに、フランソワ・トリュフォー、ジャン=ピエール・メルビル、ロマン・ポランスキー、ルイス・ブニュエル、マノエル・デ・オリベイラ、ラース・フォン・トリアー、レオス・カラックス、アルノー・デプレシャンなど世界的な名監督の作品に数多く出演しています。

 

そんなカトリーヌ・ドヌーヴの姉は、1967年製作の映画『ロシュフォールの恋人たち』で共演もしている故フランソワーズ・ドルレアック。

フランソワーズ・ドルレアックは、残念ながら早逝してしまったのですが……その存在は、本作『真実』における[不在の女優/早逝したサラ]という人物の設定やアイデアにも影響を与えているのだと思います。

 

ジュリエット・ビノシュ

ジュリエット・ビノシュ

ジュリエット・ビノシュは、1964年3月9日生まれ、フランス・パリ出身。

舞台女優としてキャリアをスタートさせると、1986年公開の映画『ゴダールのマリア』で注目を浴びることに。

その後は、1988年公開の映画『存在の耐えられない軽さ』で国際的な名声を獲得。

レオス・カラックス監督の映画『汚れた血』『ポンヌフの恋人』や、1993年に公開されたルイ・マル監督の映画『ダメージ』、1994年に公開されたクシシュトフ・キェシロフスキ監督の映画『トリコロール 青の愛』などを経て、1996年『イングリッシュ・ペイシェント』第69回アカデミー賞・助演女優賞を受賞

2001年に公開されたラッセ・ハルストレム監督の映画『ショコラ』では、第73回アカデミー賞・主演女優賞にノミネート、2011年に公開されたアッバス・キアロスタミ監督の映画『トスカーナの贋作』では、第63回カンヌ国際映画祭・女優賞を受賞しました。

関連サイト

 

今回の記事のタイトルにもあるとおり、映画『真実』が誕生するきっかけになったのが、ジュリエット・ビノシュが是枝裕和監督に「一緒に映画を作ろう」と声をかけたこと。

 

カトリーヌ・ドヌーヴも新しい映画監督の作品をよく観ているようですし、ジュリエット・ビノシュもすでに世界的なビッグスターであるにも関わらず、自ら新しい挑戦の場を常に探しているというのが、本当にすごいですね!

 

というわけで、そんな世界的な大スター、カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュが共演し、是枝裕和監督が作り上げた映画『真実』をご案内していきます!

 

『真実』

映画『真実』は、2019年に公開されました。

出演は、カトリーヌ・ドヌーブ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ、クレモンティーヌ・グルニエ、マノン・クラベル、アラン・リボル、など。

撮影は、やはり世界的に活躍をしている名匠エリック・ゴーティエです。

あらすじ

フランスの国民的大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)が、自伝本「真実」を出版した──。

アメリカで暮らす脚本家の娘リュミール(ジュリエット・ビノシュ)は、母の出版を祝うため、テレビ俳優の夫ハンク(イーサン・ホーク)と娘シャルロットを連れて、パリの実家を訪れることに。

ところが、母の自伝を読んだリュミールは、そこにありもしないエピソードが書かれていることを知って……!?

 

 

おすすめポイント

正直に書けば、上記のあらすじの文章から想像できる内容とは、少し印象が違う作品かなと思います。

母と娘の愛憎は、確かに作品の中心にはあるのですが……ことさらその部分が強調されるわけではないので、それほどキャッチーな掴みどころがある作品ではなく、表面上は穏やかにも感じられる印象だと思います。

まあ、つまり、いつも通りの是枝作品というのか、シンクロナイズスイミング(アーティスティックスイミング)のように、水上からは穏やかに見えても、水中では必死にもがいている……そんな人間観で描かれていく物語かなと思います。

とはいえ、それを見つめる是枝裕和監督の演出の手数の多さと手際の良さは、これまで以上に精緻で、さすがにそんじょそこらの映画とは段違いだなと感じられます。

是枝裕和監督の好むモチーフがいくつも織り込まれた集大成的な作品になっているのも、見事だと思いました。

 

とくに大きな事件が起きる映画ではないので、わかりやすいエンタメ映画しか観たくない方にはオススメしませんが、映画ファンなら観ておいて損はない作品だと思います!

ぜひこの機会にご覧になってみてください。

 

映画を観る

 

 

 

『こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと』

『こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと』

 

続いて、映画『真実』をさらに深く楽しみたい方へ、是枝裕和監督が手がけた書籍『こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと』を合わせてご案内します!

『こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと』

映画『真実』の制作日誌・画コンテ・写真とともに、是枝裕和監督がさまざまな想いを綴った一冊です。

 

こちらも、読み応えたっぷりでおすすめの一冊です!

とくに、現場の進行具合やそこで巻き起こるさまざまなハプニングが綴られた制作日誌は、僕自身が同じく監督業に携わる者として、大いに参考になる部分もあり、まるで擬似体験しているような読書体験でとても面白かったです。

 

せっかくなので、ひとつだけ内容を紹介すると……

今回が映画初出演となった女優マノン・クラベルの撮影初日が、実は映画のクライマックスシーンだった、というエピソードがとても興味深かったです。

セット撮影(映画撮影現場を舞台にしたシーン)は後半にまとめることになっていて、この家(主人公ファビエンヌ宅)の撮影は前半になるべくコンパクトにしなくてはならず、マノンのクランクイン(撮影初日)がこのクライマックスからということになってしまった。

(中略)

期待通りマノンは台詞も完璧に入っていて、とても穏やかな良い表情をしていた。もちろん内心ではハラハラしていたに違いない。だって相手はドヌーヴとビノシュなのだ。

映画初出演の彼女にとって、それがどれほどのプレッシャーであるかは容易に想像がつく。

(出典:『こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと』より抜粋)

 

僕は、映画でこのクライマックスシーンを見ていて、マノンさんの演技がとても良いなと思いました。

それ以前に描かれた撮影現場(仕事現場)のシーンとは違って、初めてプライベートでの主人公ファビエンヌとの交流というシーンなので、このクライマックスシーンでマノンさんは(それまでのシーンとは違う)とても良い塩梅な「緊張感」を纏っているように感じたのです。

そんな「緊張感」の正体が、このエピソードを聞いて納得。

と同時に、「真実ってなんだろう?」と、この作品ならではの感慨を抱いたのでした。

 

おすすめポイント

もし、「映画監督の仕事ってどんなことをしているの?」という疑問をお持ちの方がいらっしゃったら、映画と合わせて書籍『こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと』も手にとってみると良いのではないかと思います。

 

日本とフランスでは撮影現場の決まりごともいろいろ違う部分もありますが、きっと映画制作の苦労と楽しさの一端が感じられると思いますよ!

 

 

映画『真実』が生まれた対談

映画『真実』が誕生することになったそもそものきっかけは、2011年1月28日に東京で開催された《Co Festa 2010》のイベント「劇的3時間SHOW」での是枝裕和監督とジュリエット・ビノシュの対談でした

 

実は、僕は運良くそのイベントを観覧することが出来たので、一観客としてその現場で対談を聞いていたのですが……「そうかぁ、あの対談がきっかけになって映画が出来たんだなぁ」と、なんだか重要な場に立ち会えたような思いがしました。

 

ちなみに、当時その対談でとても印象的だったのが、ジュリエット・ビノシュが語っていた映画『ショコラ』で共演したジョニー・デップの驚くべきエピソードです。

ぶっちゃけ僕はそのエピソードを聞いて、「どうりでアイツはどこか信用ならない俳優だと思ってたんだよなぁ……」と驚きつつ呆れてしまいました(笑)

それは、撮影現場での(演技に関わる)ちょっとしたエピソードなんですが、もし「どんなエピソードだったのか?」と興味がある方は、『世界といまを考える 1 』という対談集に収録されているので、そちらをチェックしてみてください。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は、国際的に活躍するスター俳優が出演した必見作、是枝裕和監督の映画『真実』をご紹介させていただきました!

 

合わせてご紹介した書籍とともに、ぜひこの機会にお楽しみいただければと思います!

 

おすすめ!

 

というわけで、今回は以上「是枝裕和とジュリエット・ビノシュの出会いから生まれた映画『真実』」でした!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

それではまた。

 

 

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