【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

9月 15, 2020

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

 

前回、『どうして芸能人は大麻で逮捕されるのか?【大麻草の危険性とは?】』という記事を書きました。

今回は、その続きです!

 

前回の記事はコチラへ!

 

今回は、大麻(マリファナ)合法化という世界的な潮流について非常にわかりやすく解説してくれているおすすめの書籍をご紹介したいと思います!

 

というわけで、今回ご紹介する書籍がこちらです!

『真面目にマリファナの話をしよう』(著・佐久間裕美子)

 

めちゃくちゃ勉強になる本書の内容をご案内しながら、大麻(マリファナ)をめぐる状況について見ていきたいと思います!

 

というわけで、「【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー」

ぜひお読みください!

こんな方におすすめ

  • 大麻のことを知りたい方
  • 大麻をめぐる世界(海外)の事情を知りたい方

 

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

佐久間裕美子

 

まずは、『真面目にマリファナの話をしよう』著者・佐久間裕美子さんについて、簡単にご紹介させていただきます。

佐久間裕美子(さくま・ゆみこ)

文筆家。

1996年に渡米し、1998年からNY在住。

慶應義塾大学卒業、イェール大学修士課程修了。

出版社・通信社などを経て2003年に独立。

カルチャー・ファッション・政治・社会問題など、幅広いジャンルで執筆をされています。

主な著書には、『ピンヒールははかない』(幻冬舎)『ヒップな生活革命』(朝日出版社)など。

『真面目にマリファナの話をしよう』(文藝春秋)は、2019年8月に出版されました。

関連サイト

 

続いて、本書の内容をご紹介する前に、ざっくりと「大麻」について確認しておきたいと思います!

 

「大麻」とは?

「大麻」について、広辞苑やウィキペディアの解説からまとめてみると……

大麻

アサから製した麻薬。

アサの葉を乾燥させたものを「マリファナ」、花序からとったもの・樹脂を経口的に摂取する場合を「ガンジャ」「ブハン」、雌株の花序と上部の葉から分泌される樹脂を粉にしたもの・アサの花冠を喫煙する場合を「ハシシュ(ハッシッシ)といい、総称して「大麻」という。

喫煙すると、多幸感・開放感があり、幻覚・妄想・興奮を来す

含有される化学物質カンナビノイド(約400種類の合成物のひとつ)にはさまざまな薬理作用があり嗜好品や医薬品として用いられる

英語圏では、学術語で「カンナビス」、一般的には「マリファナ」と呼ばれ、俗にウィード、ポット、グラス、グリーン、ドープなどと呼ばれることもある。

麻薬取締法で規制されている。

 

となります。

 

効能としては、「多幸感」「開放感」という特徴があり、「幻覚」「妄想」「興奮」をもたらす、というわけです。

 

それでは、さっそく本書『真面目にマリファナの話をしよう』の内容を見ていきましょう

 

『真面目にマリファナの話をしよう』の内容は?

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

 

『真面目にマリファナの話をしよう』の内容について、まずは目次からざっくりご案内します。

 

『真面目にマリファナの話をしよう』目次と内容

第1章 マリファナ・ロードトリップ

現在のアメリカにおいて、人々がどのようにマリファナを利用しているのか? を、著者の実体験をもとに、さまざまな角度から検証されていきます。

第2章 なぜアメリカはマリファナを解禁するのか

アメリカにおいて、どのようにマリファナが合法化に至ったのか? その歴史が詳しく描かれていて、非常に勉強になります。

第3章 もしも自分が患者だったら

これからマリファナがどのように扱われることになるか? という世界的な動勢や、なぜ日本ではマリファナが世界的な常識とかけ離れたまま、非合法ドラッグとして危険視されてしまっているのか? という状況について考察されていきます。

 

本書の内容は、大きくこのような3章から構成されています。

 

もう長いことずっと非合法ドラッグとして取り扱われていたマリファナは、もはや一部のアウトロー、フリークやヒッピーだけが手にするものではない。マリファナ観光という言葉が生まれ、新しくオープンしたマリファナ・ショップに列ができる。

(中略)

アメリカで一体何が起きたのか。なぜ人々が急にマリファナを受け入れるようになったのか? そしてこれから何が起きようとしているのか。

 

このように語り始められる本書ですが、シリコンバレーの超エリートや、セレブが続々とマリファナ・ビジネスに参入し、4兆円規模の巨大市場となっているマリファナ業界について、さまざまなことを教えてくれる内容となっています。

 

2014年に、コロラド州がアメリカで初めて嗜好目的のマリファナ使用を合法化したことをきっかけに、マリファナ業界は急成長し、巨額の資金が流れ込んでいます

著名な起業家やIT長者(ピーター・ティールやショーン・パーカーなど)が多額の投資をし、ウィリー・ネルソンやスヌープ・ドギー・ドッグなど有名人がマリファナ・ブランドを立ち上げ、ウーピー・ゴールドバーグやリアーナがマリファナ関連のビジネスに名乗りを上げているんです。

 

ものすごい勢いで変化しているマリファナ業界のことを、いましっかり理解しておくことは、今後どのように世界が変化していくかを考える上でも、非常に有益で需要なことだと思います!

 

「面白そうだな」と思われた方には、ぜひ本書をお読みいただきたいです!

>> 『真面目にマリファナの話をしよう』(著:佐久間裕美子)

 

さて、ここからは具体的に本書の内容を見ていきたいと思います。

 

とても読み応えのある内容で、注目していただきたいトピックはいくつもあるのですが……

 

そのなかから、「どうしてアメリカがマリファナを解禁するのか?」という部分を、ざっくりまとめてみたいと思います。

 

なぜアメリカはマリファナを解禁するの?

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

 

アメリカでは1970年代初頭から「マリファナをヘロインなどの危険なドラッグと同等に扱うのではなく、アルコールのように、責任ある付き合い方をするように市民を誘導すべき」という指摘はあったといいます。

しかし、当時(ベトナム戦争などの影響もあり)ヘロイン中毒者が蔓延していた状況に対し、ニクソン大統領は、「パブリック・エネミー・ナンバーワン(アメリカの1番の敵)は、ドラッグ乱用だ」と主張して、そうした指摘を黙殺。

世論はドラッグ規制に傾いていったのです。

 

そうした背景があるなか、医療の世界では、「カンナビス(大麻の学術名)」と呼ばれるこの植物が、「癌、てんかん、多発性硬化症、緑内障、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、睡眠障害、アルツハイマー病など」の治療や防止に効果を及ぼすことが証明され、注目を集めていくことになります。

 

また、さまざまな研究から、(カンナビスに含まれる)THCという成分こそが、マリファナを吸った時にもたらされる高揚感のもとであることが発見されました。

※THC(テトラヒドロカンナビノール)……THCには「デルタ8」と「デルタ9」というタイプがあり、「デルタ9」の方が精神に働きかける作用が大きいことが解明されています。

 

そうして……

やがて、こうした医療における「マリファナ(カンナビス)」の有効性の証明が、社会的な状況のなかで、世論を動かしていくようになっていきます。

 

世界的なマリファナ合法化の流れとは?

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社会的な状況と、医療における「マリファナ(カンナビス)」の有効性の証明という流れのなかで、世界的にはどのような変化が起こってきたのでしょうか?

簡単に歴史を振り返ってみると……

 

世界的なマリファナ合法化の流れ

1970年代以降、オランダパラグアイという一部の国を除いて、マリファナは世界の大部分で危険ドラッグとして扱われてきました

そんな潮目が変わったのは、1996年にアメリカ・カリフォルニア州がマリファナの医療使用を合法化したこと(2018年に完全合法化)

2001年には、カナダマリファナの医療使用を合法化します。

そして……

2008年にはオーストリア、2013年にはイタリア・ルーマニア・チェコ共和国、2015年にはコロンビアなどが続き、

現在では、ドイツ・メキシコ・ノルウェー・ポーランド・スイス・トルコ・チリなど30か国が合法化(アジアでも、韓国、タイが医療使用を合法化)しています。

また、デンマークフランスでは限定的に合法化を認め、フィリピン・マレーシアなどでも合法化を議論されています。

さらに……

2013年には、ウルグアイ完全合法化

2018年にはカナダもそれに続いています。

そしてアメリカでも、30州あまりで医療使用を合法化、11州が嗜好用の大麻を合法化しています(2020年9月)

 

アメリカにおいて、マリファナが「危険なドラッグ」から「医療効果がある」「アルコールやタバコなどと同等に扱うべき」と認識されるに至った経緯には、世間の人々の誤解や、政治的なハードルを乗り越えて、合法化のために身を賭して戦ってきた人々の長い歴史と信念があった。

 

と著者は指摘します。

そして、そうした戦いのおかげで、いまマリファナは、「癌」「てんかん」「MS」「アルツハイマー病」「パーキンソン病」といった筋肉関係の疾患やうつ病などに効果があることが認められ、世界各国で医療のために使われるようになっているのです。

 

マリファナはどんな病気に効くの?

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

 

それではここで、現在カンナビス(マリファナ)がどのような病気に効くと証明されているのか、見ていきたいと思います。

 

カンナビス(マリファナ)の医療利用について

緑内障

カンナビスには、緑内障の原因となる眼圧を下げる効果がある。

エイズ

マリファナの吸引および経口摂取によって、エイズ患者の免疫力が高まる

また神経痛を軽減する効果もある。食欲増進の効果も見られる。

ガン

THC(デルタ8)により、化学療法の副作用(嘔吐・悪心・食欲不振)を抑える効果がある。

またガン細胞が縮小したり、カンナビスがガン細胞の成長を妨げることもわかっている。

MS(多発性硬化症)

MSに関連および起因する症状(痙縮、恒常的な痛み、発作、精神的な機能不全、食欲不振、減量、疲労、複視、性機能障害、膀胱および腸の機能不全、視界のぼやけ、歩行やバランスの不備、記憶障害)などの改善

 

さらに……

マリファナ(カンナビス)由来の成分CBD(カンナビジオール。医療効果のある成分)は、健康的な物質として注目され、いまエステやスパ、カフェ、ドラッグストアで売られるようになっています。

 

そして……

2017年11月には、WHO(世界保健機構)の、依存性薬物専門家委員会(ECDD)が、純粋なカンナビジオール(CBD)には乱用の可能性や健康に対する害がないことを結論づけました。

 

つまり……

CBDには、

乱用や依存症のリスクはない。

てんかん治療に効果がある。

CBD自体の安全性は高く、嗜好的使用が問題になっていることを示す証拠はない。

 

ということが、WHOの正式な見解として報告されているのです。

 

もちろんこれは、マリファナ自体ではなくCBDについてですが、ざっくりした「マリファナは危険」という認識が通用するような時代ではもうないってことですね。

 

そうなんです!

マリファナがタブーだった時代は、すっかり過去のこと!

いま、世界の先進国の中で医療マリファナを禁じているのは日本くらいなんです……。

 

いかがでしょうか?

このような新しい認識が世界的なスタンダードになりつつあるなか、「マリファナは危険! ダメ! 絶対!」という強い意識が蔓延している日本の現状は、果たしてこのままで良いのでしょうか?

 

個人的には、もちろん「規制は必要」だと思っていますが、「医療使用」に関しては、積極的に合法化の議論をすべきだと思いますし、そもそもマリファナに「危険ドラッグ」というほどの効能があるのか?についても再検討が必要なのではないかと思います。

マリファナで高揚するとしても……それって、お酒と比べてどれくらい危険なんですかね?

 

どうして日本では、いまだに「マリファナ」がタブー視されているのか?

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

 

本書『真面目にマリファナの話をしよう』のなかで、「アメリカとマリファナの関係は劇的に変わった」と語る著者は、一方でこのように指摘しています

 

日本ではいまだに危険ドラッグとの認識が強く、カンナビスの問題はタブーと思われている。

(中略)

世界で起きている認識のシフトから、日本がどんどん取り残されている。

 

詳しくは下記のリンクをご覧ください!

本書『真面目にマリファナの話をしよう』のなかから、「日本のこと」と題された文章が公開されています。

関連サイト

 

そして、本書の最後を、著者はこのような疑問で締めくくっています

そのルールが敷かれたときに存在していた理解や前提が間違っていたとしたら? そのときわからなかった新しい事実が科学的に証明されているのだとしたら? それでも一度作ったルールを守り続けることに意味はあるのだろうか?

 

マリファナの問題だけにとどまらない問いかけとして、この言葉を受け止めたいと思います。

 

マリファナ合法化の影響について

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

 

さて、ここまで比較的「マリファナ合法化」について好ましい要素を挙げてきましたが……

実際には、マリファナが合法化されたことで、どのような影響が起こっているのでしょうか?

やはり本書のなかから、いくつかの状況を見ていきたいと思います。

 

「マリファナ・ポリシー・グループ(MPG)」というシンクタンクが2016年に発表した「コロラドのマリファナ合法化による経済的影響」というレポートによれば、コロラド州がマリファナを解禁した2年目(2015年)マリファナ業界の売上総額は9億9600万ドル、雇用された人員は1万8000人

その経済効果は、23億9000万ドルと算定したといいます。

 

マリファナ・ビジネスは、多くの経済効果を生んでいるんですね!

 

一方で、マリファナ合法化が施行された2014年に、コロラド州では万引き、ひったくり、自転車の盗難、スリという犯罪が44%上昇し、売春、ギャンブルなどの犯罪も47%伸びているという。

 

おっと! こちらはネガティブな話ですね。

嗜好品としてのマリファナ使用が犯罪増加に繋がるとしたら、やはり大きな問題ではあります。

 

ただしこちらは、「コロラドの犯罪率は以前から全体的に上昇傾向にあり、マリファナの合法化と関係があるかどうかを見極めるのは簡単な作業ではない」と著者は指摘しています。

 

また、教育における分野では……

2017年に教育省がマリファナ関連の税金から得た予算はおよそ9000万ドル

それによって、優秀な学生に与えられる奨学金プロジェクトが増えたり、貧しい地域の公立学校の校舎が修復されました

同時に、その一方では、マリファナを理由とした停学や退学は増加傾向にあり、2015年度におよそ2500件だったマリファナ関連の停学者数は、2017年には3000件を超えたという。

 

うーん、なるほど……。

いずれにしても、マリファナ合法化によって引き起こされる「良い面」と「悪い面」があるという状況みたいですね。

 

これから「マリファナ合法化」の動きはどうなっていくのか?

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

 

すでに見たように、WHO(世界保健機構)「純粋なカンナビジオール(CBD)には乱用の可能性がない」と公式に発表したこともあって、数年前から「CBD」は世界的なブームになっています

 

CBDの入ったスイーツお茶・コーヒーなどの商品が次々と登場し、そのパッケージやブランディングもどんどん洗練されているんです。

 

ここでちょっとした余談ですが……

人気ユーチューバーもマリファナ関連の動画をアップしていたりします。

 

海外の状況を理解する参考になるかと思いますので、興味があればご覧ください。

 

 

ずいぶん長くなってしまったので、そろそろ終わりたいと思いますが……

 

アメリカがマリファナ合法化してきた経緯を振り返ると、二つの大きな要因がある。

と、著者は指摘しています。

ひとつは、深刻な疾患を抱えた患者と、医療効果を信じる市民の民意から起きた、カリフォルニア発の医療使用合法化の波

もうひとつは、リーマン・ショックからの回復をかけた経済的な動機による嗜好用マリファナ解禁の波

 

いま、マリファナ合法化がここまで大きな波になってきた状況には、間違いなく「金になる」ということが大きな要因になっていると思います。

 

多少うがった見方かもしれませんが、結局は、いつの世も「経済」がもっとも大きな動機なんだってことかもしれませんね……。

 

そして、そうしたなか、まもなくアメリカ大統領選挙が行われます!

 

【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー

 

大麻合法化に積極的な民主党のバイデンと、大麻合法化には反対の現大統領トランプ……。

 

トランプは、「マリファナ合法化」を選挙の争点から外そうと目論んでいるようですが、果たしてどちらが勝利することになるのでしょうか?

ぜひ、注目していきたいと思います!

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

けっこう長くなってしまったのですが……とにかく、今回ご紹介した『真面目にマリファナの話をしよう』は、「マリファナ合法化」だけでなく、たくさんのことを考えるきっかけを与えてくれる超おすすめ本だってことを、最後にあらためてお伝えしておきたいと思います!

 

ぜひたくさんの方に読んでいただきたいおすすめの一冊です!

 

というわけで、今回は以上「【大麻合法化を考える】『真面目にマリファナの話をしよう』レビュー」でした!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

それではまた。

 

 

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