ワット・パイロンウア(地獄寺)を満喫した僕は、バンコク市内に戻るため、通りにあるバス停に向かったのでした……。
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ワット・パイロンウア(地獄寺)からバンコク市内に戻る方法
バンコク市内に戻る手段については、もちろん事前にネットで調べてありました。
けれど、見つけた情報は……
通りにバス停があるので、そこで気長に待っていると赤いバスが来ます。
といった程度のもの。
そう思ってはいたのですが、
と、僕は生来の楽観性だけを武器にここまでやってきたのでした。
というわけで、広い敷地を出て、前の通りまでやってきました。
来るときに、バスを降りた通りです。
その通りに出ると、木でできたおんぼろな東屋のようなバス停があるのがすぐ目に入りました。
壁は無くて、屋根がついているだけの、掘っ建て小屋みたいな感じです。
(写真を撮り忘れたので、うまく伝わるか心許ないですが……。)
もちろん時刻表などはありません。
バンコク市内に戻るためには、そこで、乗って来たのと同じ赤いバスがやって来るのを待つしかないのです。
そんなわけで、僕はひとりきり、タイの田舎のバス停で、ベンチに座ってバスを待つことになりました。
おだやかな田舎の午後です。
のんびりした時間が流れていきます。
そんなゆるーい心持ちで、バスを待ちます……。
待ちます。
待ちます……。
待ちます……。
例によって、なかなかバスはやって来ません。
またしても、次第に不安になってきました……。
そんなふうにドキドキしはじめたころ……
バス停にひとりの青年がやって来ました。
20代前半でしょうか、若くて精悍な青年です。
と、バスを待つ仲間が出来たことに少しばかり心強く思った僕は、彼に問いかけました。
残念ながら、タイ語オンリーの青年で、まるで英語は通じませんでした……。
気まずい微笑みを交わしただけで、沈黙が訪れます。
すると!
今度は、痩せてヨボヨボのおじさんがひとりバス停にやって来ました。
と思ったら、そのおじさんが僕にタイ語で話しかけてきます。
なにを言ってるのかチンプンカンプンです。
なぜか、おじさんは僕に話しかけ続けてくるのです。
さすがに困った僕を見かねて、青年がタイ語でおじさんになにか応えます。
どんな話をしているのかわかりませんが、青年すらも困ったような顔をしているところを見ると、どうやらちょっと変わったおじさんだったようです。
そうして、
精悍なタイ人青年と、ちょっと変わったタイ人のおじさんと、アラフォーの日本人旅行者……
なんの因果か、奇妙な巡り合わせでタイの田舎のバス停に集うことになった3人の男は、とくにそれ以上会話をすることもなく、午後ののんびりした時間を共有することになったのでした……。
それから、10分ほど経ったでしょうか。
ふいに、通りの反対側の道を、赤いバスがやって来るのが見えたのですっ!
と、思わず嬉しくなったのですが……
やって来たのは通りの反対側なので、僕が待っているバスではなく、来るときに乗って来たほうのバスです。
落胆する僕を横目に、そのバスがやって来るのを見た青年とおじさんは、サッと立ち上がると、小走りに駆け出して行きます。
どうやら、ふたりが待っていたのはあちらのバスだったようです。
そして、青年とおじさんは、足取りも軽やかに通りを横切ると、やって来たバスに乗り込んで、あっという間にそのバスと共に去って行ってしまったのでした……。
なんだか少しだけさみしい気分になりながら、僕は再びのんびりした時間が流れるなか、ひとりでバスを待つことになりました……。
待ちます……。
待ちます……。
待ちます……。
けれど、待てど暮らせど、バスはやって来ません……。
思わずため息をついてうなだれていると……
今度は、兄弟らしき3人組がバス停にやって来ました!
嬉しくなった僕は、チラチラとその兄弟を観察するように見てしまいました。
年上のお姉さんは、20代半ばでしょうか? スマフォで音楽を聴いています。
その隣にまだ幼い弟がいて、その弟の面倒を見ながら10代後半くらいの男の子が一緒にスマフォのゲームをやっています。
そんなことを思いながら、3人の様子を伺います。
そんな3兄弟の様子に微笑ましい気分になった僕は、思いきって声をかけてみました。
またしても、英語は通じませんでした……。
まぁ、仕方がありません。
バスを待つしかないのです。
スケールの違う雨と風! タイの田舎で命の危機に!?
ところが!
ふと気付いたら、遠くの空がいつの間にか暗くなっています……。
大きな空を、こちらのほうに雨雲が押し寄せて来ているのです!
そう思っていたのもつかの間、あきらかに風の流れが強まってきて……
雨雲がどんどん近づいて来ました!
そして、あたりが薄暗くなったかと思うと、雨が降ってきました!
強い風は、あたりの砂を巻き上げて、竜巻のように空に舞い上げています。
そのうえ!
バス停には壁がないので、降り出した大粒の雨は、直接横なぐりに僕と3兄弟に襲いかかってくるのです!
ごーごーと吹く風が、バス停を揺らします!
不安に襲われた僕は、まるで『オズの魔法使い』のように竜巻に巻き込まれて遠くに吹き飛ばされてしまう最悪の事態を想像しながら、それでも懸命にバス停の柱にしがみつくことしか出来ません。
しかも!
雨が降るなかとはいえ、いつなんどき赤いバスがやって来るかわからないので、必死に通りの様子も伺っていなければならないのです!
横なぐりの雨が襲ってきます。
その雨に視界を遮られながら、通りの様子を伺います。
竜巻のような風がバス停を揺らします。
柱にしがみついて、雨に襲われて、通りを伺って……。
雨!
風!
バス!
雨!
風!
バス!
僕は、そんな崖っぷちの危機を体感しながら、嵐のなかを必死に生きていたのです!
そうして……
30分近い死闘が続いたでしょうか……
はじまり同様に、唐突に嵐は去って行ったのでした……。
僕は、ホッと力を抜いて、共に生き延びた3兄弟たちと微笑みを交わし合ったのでした……。
危機からの生還! そして、バンコク市内へ!
雨でびっしょり濡れてしまった僕たちが、再び広がった青空に安心したころ、ついに、念願の赤いバスがやって来てくれました!
3兄弟と一緒にバスに乗り込んだ僕は、そこでようやくひと安心。
そう安堵したからでしょうか、疲れきった体を座席に落ち着けると、いつしかウトウトと眠ってしまったのでした……。
それから、どれくらい時間が経ったのでしょうか……
ふいに、3兄弟のお姉さんに声をかけられて目を覚ましました。
たぶんそんなふうに声をかけてくれたんだと思います。
気付けば、すでにバスは都会の中心地っぽい繁華街を走っていました!
3兄弟のお姉さんは、僕がバスに乗るときに「電車の駅に行きたい」と添乗員のおばさんに伝えていたことを聞いていて、どうやら気にかけてくれていたようなのです!
お姉さんが笑顔で応えくれます。
僕は、共に嵐を生き延びた戦友に、もう一度心からのお礼を言ってバスを降りたのでした……。
旅のメモ
事前にネットで調べた情報から、
「帰りは途中にある電車の駅(新しく出来たパープルラインのTalad Bang Yai/タラード バン ヤイ駅)でバスを下車して、そこからその電車に乗って行くと、地下鉄(MRT)に接続している駅まで行ける」
ということがわかっていたので、電車でパープルライン〜MRT〜BTSという、行きの道順とは違うルートを選んだのでした。
ただ結果的には、そこからけっこう長い時間を電車に揺られることになったので、行きのルートと帰りのルート、どちらが移動時間が短いかは不明です。
そんなわけで、ワット・パイロンウア(地獄寺)への日帰り旅は、たくさんのタイ人の親切に助けられながら、無事に命を落とすことなく終了したのでした!
(つづく)
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